【書評】『政治哲学』(ブックガイドシリーズ基本の30冊 )伊藤康彦 著 人文書院

『政治哲学』(ブックガイドシリーズ基本の30冊 )の評価

『政治哲学』の評価
読みやすさ
(5.0)
専門性
(3.0)
参考文献引用の割合
(3.0)
ページ数
(4.0)
値段
(5.0)
総合評価
(4.0)

目次

第1部 政治とは何か(政治・権力・自由)

丸山眞男『政治の世界』
マキアヴェッリ『君主論』
ウェーバー『職業としての政治』
フーコー『監獄の誕生』
ミル『自由論』
フロム『自由からの逃走』

第2部 政治と規範(正義・善・法)

アリストテレス『ニコマコス倫理学』
ロールズ『正義論』
サンデル『リベラリズムと正義の限界』
イェーリング『権利のための闘争』
ヌスバウム『感情と法』
デリダ『法の力』

第3部 デモクラシーと政治の場

ルソー『社会契約論』
シュムペーター『資本主義・社会主義・民主主義』
フィシュキン『人々の声が響き合うとき』
ムフ『政治的なるものの再興』
ミラー『ナショナリティについて』
ハーヴェイ『都市と社会的不平等』

第4部 現代の政治争点(財・アイデンティティ・戦争・環境)

ノジック『アナーキー・国家・ユートピア』
マーフィー、ネーゲル『税と正義』
キムリッカ『多文化時代の市民権』
バトラー『ジェンダー・トラブル』
ウォルツァー『正しい戦争と不正な戦争』
カント『永遠平和のために』
シンガー『動物の解放』
キャリコット『地球の洞察』

第5部 国境を越える政治(グローバリゼーションと地球政治の可能性)

キケロー『義務について』
マルクス『共産党宣言』
ベイツ『国際秩序と正義』
尾崎行雄『わが遺言』

書評(感想、レビュー)

『政治哲学』(ブックガイドシリーズ基本の30冊 )は、哲学者、政治学者、経済学者、法学者、社会学者、倫理学者、地理学者が書いた30冊の本を取り上げて紹介しています。

本のタイトルは『政治哲学』ではあるが、紹介されている本が政治哲学とは関係がないように思える本も紹介されています。

では、この本は何を狙いとして書かれているのか、著者の伊藤康彦さんは「はじめに」で

政治における「べき」論や善悪論を深めることを支援する本を30冊選んだ。政治における規範を考える上で必要な30冊と言っても良い。その意味で本書は専門分野としての政治哲学の30冊ではなく、私たちが政治を哲学するための30冊を紹介していると理解していただきたい。

引用:伊藤康彦著(2012年)『政治哲学』(ブックガイドシリーズ基本の30冊 )人文書院 pp6

と書かれています。

政治哲学を学問分野として学びたい人を対象としているのではなく、政治学を「学ぶ」「議論したい」人を対象に書かれています。

本書の特徴

各部で一冊の本を紹介するとき

  1. 本が書かれた時代背景
  2. 本についての紹介
  3. 「キーワード」の用語解説
  4. 現代の社会問題と「キーワード」をリンクさせて説明
  5. 参考文献や関連文献について

の順で書かれています。

一般的な政治学入門書や辞書では、1.本が書かれた時代背景、2.本についての紹介、3.「キーワード」の用語解説について書かれています。それに対してこの本『政治哲学』では、「4.現代の社会問題と「キーワード」をリンクさせ説明」していることで、書かれている内容がすんなり頭に入ってきます。

そして読者に問いを投げかけてきます。

例えば、

  • ウェーバー『職業としての政治』では、制度と倫理の関係について
  • サンデル『リベラリズムと正義の限界』では、リベラリズムとコミュ二アリアニズムの論争について
  • シュムペーター『資本主義・社会主義・民主主義』では、エリート支配としてではない民主主義について

などです。

1つ1つの問いに対して、自分なりの考えを巡らせるとあっという間に時間が過ぎてしまいます。

読みやすさ

政治学を「学ぶ」「議論したい」人を対象に書かれているため、最低限の専門用語しか使われておらず、とても読みやすいです。

「高校レベルの世界史」+「政治学入門書」を読んでいる人、または「政治学の講義を受講」した人であれば、そこそこのスピードで読むことができると思います。

参考文献はどれも日本語訳された本が紹介されています。

こんな人におすすめ

  • 政治学を哲学したい人
  • 政治学入門書を読み又は大学で政治学の講義を受けて、さらに政治学を学びたい人
  • 各項目で紹介されている本を読む時間はないが、それぞれの本の概要について知りたい人