【書評】『国際関係理論第2版』吉川・野口著|勁草書房

『国際関係理論第2版』の評価

『国際関係論第2版』の評価
読みやすさ
(5.0)
専門性
(4.0)
参考文献引用の割合
(5.0)
ページ数
(4.0)
総合評価
(4.5)

目次

序章:国際関係理論の構図

第I部:国際関係理論のアプローチ

第1章 近代国際システムの興隆
第2章 定性的研究方法への道案内
第3章 定量的研究方法への道案内
第4章 分析レベルと分析アプローチ

第II部:戦争と平和の国際関係理論

第5章 リアリズム
第6章 リベラリズム

第III部:国際関係の政治経済理論

第7章 国際政治経済論
第8章 従属論と世界システム論

第IV部:多様化する国際関係理論

第9章 コンストラクティビズム
第10章 規範理論
第11章 批判的国際理論

書評(感想、レビュー)

『国際関係理論第2版』は国際関係理論の入門書で、4部11章365ページで構成されています。国際関係理論の本としては珍しく10人での共同出版となります。

本書の「まえがき」でも書かれていますが、国際関係理論の研究はアメリカでは進んでいますが日本ではあまり注目されていないため、国際関係理論の入門書はあまり出版されていませんでした。

著者の9人のうち2人は外国人、5人は海外の大学で博士課程修了している日本人であることからも、日本であまり国際関係理論が注目されていないと言えるでしょう。

そんな中、若手・中堅の研究者により2006年に『国際関係理論第1版』が出版され2015年に『国際関係理論第2版』が出版されました。1版と2版の違いについては後ほど説明します。

本書のねらい

本書は、国際関係の理論を紹介し、理解するための入門書となります。

  1. 国際関係論の方法論
  2. 戦争と平和の国際関係論
  3. 国際政治経済学の理論
  4. 多様化する国際関係理論

の順に各理論について説明し、課題や展望について解説しています。

また、客観的判断をするために必要な「批判的思考力」を身につけるために、理論について学ぶことが本書の目的となっています。

国際政治学、国際政治経済学、国際関係学など「国際」とつく学問を専攻している人であれば、知らなければいけない内容となっています。

『国際関係理論第1版』と『国際関係理論第2版』違い

大きな違いは、『国際関係理論第1版』の第I部:国際関係理論のアプローチでは

  • 第1章 近代国際システムの興隆
  • 第2章 定性的研究方法への道案内
  • 第3章 分析レベルと分析アプローチ

でしたが、『国際関係理論第2版』の第I部:国際関係理論のアプローチでは

  • 第1章 近代国際システムの興隆
  • 第2章 定性的研究方法への道案内
  • 第3章 定量的研究方法への道案内
  • 第4章 分析レベルと分析アプローチ

「定量的研究方法への道案内」の項目が増えました。

実は、第1版でも定量的研究方法について少し触れているのですが、第2版ではより詳しく説明されています。

シバポチ

定量的研究とは数値を利用して研究することです!!

定量的研究での数理・軽量分析に興味がある人は、下記の書籍も読んでみてください。

研究へのアプローチ

一般的な入門書であれば理論を説明して終わりなのですが、本書では具体的な研究方法についても説明しています。研究方法の進め方について順を追って説明し、研究報告書の見本を掲載し、国際政治学、国際政治経済学や政治学を専攻している人の「研究報告書」の作成や「卒業論文」を書く手助けをしてくれます。

例えば、定性的研究では「帰納法」と「演繹法」について説明し、「文献調査」「仮設構築」「競合仮設」とかなり踏み込んだ内容についてまで書かています。

仮設構築のための4つのステップでは、学部生の内容、学部生にとっては高度な内容、大学院のための上級レベル、研究者にとっては必要最低限と、入門書ではあるのですが幅広い人を対象として書かれています。

MEMO
論文のテーマを考えるのではなく、論文を書くための方法について学ぶことができます。

本書のおすすめポイント

本書を読んでいて「おもしろい」「楽しい」と感じたのは、それぞれの立場から理論を説明し、その理論に対しての反論意見に対してさらに反論し、最後に今後についての展望を述べているところです。

一般的な国際政治学の入門書では、リアリズム、リベラリズム、コンストラクティビズム、従属と世界システム論、規範理論は同じ章で同一人物が書くために、各理論の説明に物足りなさを感じてします。

しかし、本書ではリアリズム、リベラリズム、国際政治経済論、従属と世界システム論、コンストラクティビズム、規範理論、批判的国際理論の著者が異なるため、理論の説明と検証内容が詳細にされています。

「理論の説明→現状分析→立場の反論→それに対しての反論→今後の展望」の説明が行われていることで、それぞれの考え方について深く学ぶことができます。

シバポチ

各理論を説明する際に著者が「限界」と「課題」を知った上で、それぞれの理論の重要性を説明しているところがいいです。

推奨文献のレベルは高い

各章の最後に、推奨文献を紹介しているのですが大半が洋書です。各洋書で何が書かれているのか説明されています。

学生でも英語が得意な人であれば、読むことはできると思いますがそれなりの時間が必要になると思います。

シバポチ

ちなみに学生時代に『国際関係理論第1版』のリアリズムの章での推奨文献でRealism and the Balancing of Power: A New Debate』が挙げられていたので購入して読んだのですが、読むのが大変だったという思いでしかないです 苦笑

こんな人におすすめ

  • 国際関係理論をこれから学びたい人
  • 定性的研究について学びたい人
  • 「研究報告書」「卒業論文」を書こうとしている人
  • 国際政治学、国際政治経済学、国際関係学など「国際」とつく学問を専攻している人

シバポチ

「国際関係理論について学びたいんですけど、どの本を読んだらいいですか」と聞かれたら迷わず本書を選びます。