【書評・要約】『人新世の「資本論」』解りやすく解説

『人新世の「資本論」』は、ドイチャー記念賞を歴代最年少で受賞した(大阪市立大学大学院経済学研究科准教授)斎藤幸平さんが書いた本で、8章+おわりで合計375ページで構成されています。

書評(感想、レビュー)

39万部も売れている本なので、みなさんもご存じかもしれまんが、インターネットでこの本について調べると、評価やレビューは全体的に高いのですが、批判的な意見も目立ちます。

筆者の主張が明確なため、それに賛同できる人は評価しますし、賛同できない人は評価しないという結果になっていると思われます。

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『人新世の「資本論」』の主張・要約

気候問題が深刻化しているため各国が対策をしているが、それはすべて資本主義をベースとした取り組みで、このままでは気候問題は解決できない。

 

そこで資本主義をやめ「脱成長経済」をして消費主義・物質主義から決別し、自己満足度を高める生活が必要になります。

 

なぜなら資本主義をベースとした取り組みでは気候問題は解決できないため、人々が自発的に自主的に気候問題に対して取り組む必要があります。

 

そのためには国や一部の企業の資本家が公共財を管理するのではなく、民主主義的に人々が協力して水・電気・医療・教育・介護などの公共財産を管理する(コモン)の発展が重要になります。

 

この「コモン」を発展させるためには「脱成長コミュニズム=平等主義」とい概念が重要で、脱成長コミュニズムをすることでコモンが発展し、民主主義的に人々が協力して公共財を管理するのと同じように、気候問題も人々によって管理(環境対策)されるようになると、気候問題を解決する可能性が高くなる。

 

専門用語が多く要約しすぎているため、これだけ読んでも「???」「何となくしか理解できない」人も多いと思いますので、もう少し詳しく説明したいと思います。

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資本主義をベースとした気候問題対策

世界各国での異常気象による被害で、気候問題の意識は高まっています。

例えば、二酸化炭素を排出する自動車から、二酸化炭素を排出しない電気自動車への乗り換えが話題となっています。

確かに、電気自動車は二酸化炭素を排出しませんが、電気自動車が走るための電気はどのように作るのでしょうか?

太陽光発電や風力発電を利用すればいいと考えている人もいるかもしれませんが、ソーラーパネルや風力発電機を作るためには、たくさんの資源を消費して二酸化炭素を排出します。

また、電気自動車に必要なリチウムイオンを製造するため、新たに鉱物を掘らなければいけないため、採掘するためにたくさんの二酸化炭素を排出します。

要するに、資本主義的な何か新しい技術を生み出して、気候問題を解決しようとしても二酸化炭素を排出してしまい、そんなことをやってるうちに地球が破壊されてしまう。

「脱成長経済」

そこで資本主義をやめ、「脱成長経済」しようと筆者は主張しています。

「脱成長経済」といっても、すべてを捨て田舎で原始人のような暮らしをしようと言ってるわけではありません。

資本主義の物を製造して→売って→買って→使って・集めて満足する消費主義・物質主義ではなく、自己満足度を高める新しい生活が必要になります。

例えば、スポーツをしたり、ハイキングをしたり、本を読んだり、ボランティア活動をしたりすることで満足しようと提案しています。

コモンがなぜ重要なのか

本来であれば水は無料で使用できるものであったが、いつの日からかペットボトルで水が販売されるようになっています。

高校まで実質無料で学校に通うことができますが、いつの日からか学校教育だけでは足りず、塾に通うのが当たり前になっています。

国や一部企業の資本家が水・電気・医療・教育・介護などの公共財を商品化して、物を製造して→売って→買って→使って・集めて満足する資本主義のシステムで利益を得ています。

そこで国や一部企業の資本家が公共財を管理するのではなく、市民が自分たちで公共財である水・電気・医療・教育・介護などを管理するコモンを発展させることが重要だと筆者は主張しています。

公共財であるにも関わらず、現在はこれらを使うためには、働いて稼いだお金を使って支払いをしています。

もし、公共財を自分たちで管理することができれば、水道代や電気代を支払うために働いていた時間を有意義に使うことができ、自己満足度を高めるための新しい時間を手に入れることができます。

また、資本主義をベースとした気候問題の取り組みは、気候問題を利用して利益を得るためだけで、本当に気候問題に取り組んでいるのかは定かではありません。

だからこそ、民主主義的に人々が自分たちで公共財を管理してコモンを発展させ気候問題に取り組む必要があります。

公共財を自分たちで管理する「コモン」というのが重要なキーワードになります。

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コモンを発展させるためには「脱成長コミュニズム=平等主義」とい概念が重要

コモンを発展させることが大事なのは理解できたと思うのですが、ではコモンを発展させるためにはどうすればいいのか?

筆者はコモンを発展させるためには、「脱成長コミュニズム=平等主義」とい概念が重要であると主張しています。

この「脱成長コミュニズム」が筆者の一番の主張になります!!

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  1. 使用価値経済への転換:人々のニーズを満たす経済システムへの転換
  2. 労働時間の短縮:ワークシェアー、単純労働はしない
  3. 画一的分業の廃止:労働から解放して、労働そのものにもっと魅力的なものにする
  4. 生産過程の民主化:資本の専制から脱却して生産の民主化(社会的所有)
  5. エッセンシャルワークの重視:エッセンシャルワーク、ケア労働

※この5つについては本ではもっと詳しく説明されています。

実際にコモンによる管理が行われている地域もあり、本の後半ではスペインやアメリカの事例をあげています。

MEGAマルクスの解釈による筆者の主張

『資本論』は3部構成で、1部はカール・マルクスにより書かれ、2部、3部はマルクス亡き後にフリードリヒ・エンゲルスにより編集されていることは、多くの人が知っていると思います。

しかし、これ以外にもマルクスは手紙やノートなど膨大な資料があるようで、これらを検討・編集してまとめていることをMEGAマルクスと言うそうです。

筆者は『資本論』を書いたカール・マルクスは、実は晩年考え方が変化していることをMEGAマルクスで発見し、筆者によるこの本での主張は晩年のマルクスと同じ考え方であるとしています。

あまり詳しく説明してしまうと本を読む面白みがなくなってしまうのと、MEGAマルクスの解釈に関しては、かなり読み手により解釈が異なってくるためになるため、この部分にはあまり触れないようにしておきます。

あえて書くのであれば、読んでいてしっくりこなかったMEGAマルクス

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読んでいてしっくりこなかったMEGAマルクス

MEGAマルクスについて、知っている人や学んでいる人は違和感なく読めると思いますが、私のようにほぼ初めてMEGAマルクスを学ぶ人にとっては、MEGAマルスクについての情報量が少なく、読んでいて理解はできるがあまりしっくりきませんでした。

資本論は読んでるんですけど・・・

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MEGAマルクスが体系化されていないためか、筆者がMEGAマルクスの都合のいい部分だけを引用しているのではないかと勘ぐってしまいました。

それくらいMEGAマルクスに対しての、情報量と説明が不十分に感じてしまいました。

また、MEGAマルクスを学ぶために、どの本を読めばいいのかも書いて欲しかったです。

この本はこんな人におすすめ

環境と経済についての関係性について、たくさんのデーターを取り上げているため環境と経済について学びたい人にはおすすめです。

個人的には、知識として1章2章の環境について、4章のMEGAマルクス、8章のスペインやアメリカの事例については新しい発見でした

また、いまの資本主義のシステムに限界があるけど、今後どのように解決すればいいのかと考えている人には、新たな答えを出すための手助けになる本だともいます。

本の流れとして「脱経済成長」と資本主義ベースではなく、社会主義や共産主義的な考えが重要であると書かれているため、資本主義を重んじている人からすると、本を読んでいて納得できない部分が多いと思います。

反対に、社会主義や共産主義的な考えをする人にとっては、読んでいて「なるほど!!」と思う部分が多いと思います。

政治学の理論であれば、リアリズムよりの人にとっては納得できない部分が多く、リベラリズムよりの人にとっては納得しやすい本になると思います。

ただ正直な話、39万部も売れている話題の本で、書いているのがテレビや雑誌で取り上げられることが多い斎藤幸平さんであることからも、共用としても読まざる負えないというのが本音ですかね。

インターネットで調べてみると、大学の講義などでも取り上げられていることから、ディスカッションやディベートなどでも今後使われるテーマになると思います。

みなさんも興味があればぜひ読んでみてください。

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さいごにまとめ

  • いまの環境問題に対しての対策は、あくまで資本主義ベースでこのままでは間に合わない
  • 消費主義・物質主義ではなく自己満足度を高める新しい生活方式が重要
  • 資本主義を止め「脱成長経済」し公共財を民主主義的に人々が管理するコモンの拡大が重要
  • コモンを発展させるためには「脱成長コミュニズム」の5つの項目が重要
  • コモンが拡大することで、時間的余裕が生まれ、気候問題にも積極的に介入して人々で自発的に問題を解決する

できるだけ解りやすく説明するために、少し内容を省略して解説している部分もありますがご了承ください。

政治学の宝庫では、政治学について解説している記事が多数ありますので、興味のある方はぜひ他の記事もご覧ください。

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