リアリズム(現実主義)とは何か?わかりやすく特徴を解説

国際政治学・国際関係論の理論を学ぶ上で、もっとも重要な理論が「リアリズム」と「リベラリズム」になります。

この記事では、その1つである「リアリズム」について、リアリズム(現実主義)とは何か?、特徴、歴史、正しい理解、批判についてわかりやすく簡単に解説していきます。

リアリズム(現実主義)とは何か?

リアリズム(現実主義)とは

リアリズム(現実主義)

世界はアナーキー(無政府状態)という立場で、国際関係の主体は「国家」でパワーを重視し、国家間の権力闘争を中心に分析する学問的立場の理論

です。

国際政治学や国際関係論の参考書や専門書でも、上記のようなリアリズム(現実主義)の説明がなされていると思います。

国際政治学や国際関係論を少し学んだ人であれば、何となく理解できるかもしれません。

しかし、はじめて学ぶ人が上記の説明文を読んでも「???」ですよね。もう少しわかりやすく説明しますね。

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リアリズム(現実主義)わかりやすい説明ver

世界秩序を維持するためのリーダー的存在(世界警察)はおらず、国際関係においての主役は「国家」という考えで、国家のパワー=軍事力がもっとも重要だとされており、これらの考えをベースにして国家間の権力闘争を中心に分析する学問的立場の理論

どうでしょうか?

完全には理解できずとも、リアリズム(現実主義)とは何か?を何となく理解できたのではないでしょうか。

次にリアリズム(現実主義)の理解をさらに深めるために、リアリズム(現実主義)の特徴について学んでいきましょう!!

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リアリズム(現実主義)の特徴

リアリズム(現実主義)の特徴
  1. 世界はアナーキー(無政府状態)という立場
  2. 国家が国際関係の主役
  3. 安全保障
  4. 国家間の対立・権力闘争

1.世界はアナーキー(無政府状態)という立場

リアリズム(現実主義)では、世界はアナーキー(無政府状態)であるとされています。

なぜこのような考え方になるかというと、主権国家よりも強い権力を持っているアクター(行為主体)が存在しないためです。

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例えば、私たちが住んでいる日本では、国民の生命や財産を守るためにの「法律」や治安を維持するための「警察」がいますよね。

しかし、日本を守ってくれる「法律」や「警察」があるかというと・・・ありませんよね。日本を助けてくれるアクター(行為主体)は存在しません。

国家よりも強い権力を持っているアクター(行為主体)が存在しないのであれば、自分の国は自分たちで守らなければいけません。

このような考えがリアリズム(現実主義)の前提となります。

2.国家が国際関係の主役

リアリズム(現実主義)では、世界はアナーキー(無政府状態)であると考えられているため、国家よりも強い権力を持っているアクター(行為主体)が存在しないとされています。

そのため必然的に「国家」が国際関係の主役になるとされています。

ここで疑問に思った人がいると思います。

「国家以外の非国家主体(国際機関、多国籍企業、NGOなど)も国際関係に影響しているのではないかと?」

たしかに国際機関、多国籍企業、NGOなども国際関係に何らかの影響を与えているのは事実ですが、これはあくまで「国家」がこれらの存在を認めているからです。

国家が本気になれば、国際機関を無視することができますし、多国籍企業が自国で活動できないようにもできますし、NGOの協力を拒否することもできます。

そのためリアリズム(現実主義)では「国家」が国際関係の主役であるとされています。

リアリズム(現実主義)では、「国家」はどのような存在なのかも一緒に理解しておきましょう

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リアリズム(現実主義)では、国家はパワー=軍事力を行使して自国の利益を最大化するアクター(行為主体)であるとされています。

 

あくまで国益を重視するため、世界全体の平和や安全を目指してはいません。

 

ただし世界が平和である方が、自国の利益になると思った場合は、世界が平和になるように国家が行動することがあります。

パワーについて

国際政治学や国際関係論では、「パワー」をどのように定義づけるかの研究がされています。

 

「パワー」についての解説をすると、リアリズム(現実主義)の解説が長くなってしまうため、別の記事で解説する予定です。

 

国際政治学や国際関係論を学び始めたときは、リアリズム(現実主義)のパワー=軍事力であると覚えておきましょう。

3.安全保障

リアリズム(現実主義)では、世界はアナーキー(無政府状態)であるため、自分の国は自分たちで守る必要があるため自国の安全保障が重要になります。

国家は自国を守るために、軍事増強・開発や同盟を積極的に行います。

同盟はあくまで自国の安全を守るための手段であり、世界が平和になることを望んで同盟を結んでいるわけではありません。

平和になるための同盟ではなく、自国の安全を守るための同盟です。

4.権力闘争(パワーポリティクス)

リアリズム(現実主義)では、国家はパワー=軍事を行使して自国の利益を最大化するために行動するため、国家間で権力闘争(パワーポリティクス)が展開されます。

各国家は自国が侵略されないように、軍事増加・開発や同盟を結んだ結果、国家間でのバランスがとられるようになり、勢力均衡(バランスオブパワー)というメカニズムが発生します。

勢力均衡とは、パワーが均衡することにより、国際社会が安定するという考えで、

  • 「覇権安定論」1国のパワーが強いことで国際社会が安定する
  • 「二極安定論」2国のパワーが強いことで国際社会が安定する
  • 「多極安定論」複数の国のパワーが強いことで国際社会が安定する

という3つの考え方がもっとも有名です。

注目ポイント

ここで注目すべきポイントは、あくまで国際社会の安定は、「みんなで国際社会を安定させよう!!」協力したわけではなく、各国家が自国の利益を最大化しているうちに、勢力が均衡し安定している点です。

 

リアリズム(現実主義)の特徴についてを学んだので、もう一度リアリズム(現実主義)とは何か?の文章を読んでみましょう

リアリズム(現実主義)

世界はアナーキー(無政府状態)という立場で、国際関係の主体は「国家」でパワーを重視し、国家間の権力闘争を中心に分析する学問的立場の理論

どうでしょうか!?リアリズム(現実主義)の説明文を読んだだけで、リアリズム(現実主義)について理解できるようになっていませんか?

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さたにリアリズム(現実主義)の理解を深めるために、リアリズム(現実主義)の歴史についても学びましょう。

リアリズム(現実主義)の歴史

トゥキュディデスによるリアリズム

トゥキュディデス(紀元前460年頃~紀元前395年)は、古代ギリシャの歴史家で『戦史(ペロポネソス戦争)』の著者です。

トゥキュディデスは、リアリズム(現実主義)による視点で『戦史(ペロポネソス戦争)』を書いています。

ちなみにペロポネソス戦争とは、アテナイ(ペロポネソス同盟)とスパルタ(デロス同盟)が戦った戦争です。

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トゥキュディデスは、ペロポネソス戦争が起きた原因は、アテナイのパワーが強くなってきたのをスパルタが恐れ、スパルタが勢力均衡(バランスオブパワー)を維持するために戦争をしたと主張しました。

勢力均衡(バランスオブパワー)というリアリズム(現実主義)の視点から説明しています。

マキャベリによるリアリズム

マキャベリ(1469年〜1527年)は、イタリアのフィレンツェの政治家、外交官で、作家として『君主論』の著者です。

マキャベリは『君主論』で、「法律」とリアリズム(現実主義)でいうところの「パワー」が重要であると主張しました。

何事をするにも「法律とパワーが重要なのはあたりまえじゃん!!」と思った人が多いのではないでしょうか?

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実はマキャベリが生きていたルネサンス時代は宗教色が強い時代でした。政治に宗教が大きく関与し、宗教による倫理観によってすべてが決まっていました。

しかし、このような時代の中でマキャベリは『君主論』で、統治や侵略するためにもっとも重要なのは「法律」と「パワー」であると主張しました。

大半の人々は、宗教による倫理観を重んじて時代に、リアリズム(現実主義)的な考えをしたことが重要なポイントです。

MEMO

ちなみに『君主論』は悪魔の書とも呼ばれカトリック教会から「禁書」扱いをされていました。

ホッブスによるリアリズム

ホッブス(1588年~1679年)は、イングランドの哲学者で『リヴァイアサン』『市民論』の著者として有名です。

ホッブスは『リヴァイアサン』『市民論』で、「万人の万人に対する闘争」を提唱しています。

「万人の万人に対する闘争」とは

人間は本質的に権力を求めているために、自然状態になると争いがおこるという考え方

人間は本質的に権力を求め争いをしてしまうため、国家は「法律」によって治安を維持します。しかし、国家は、国家よりも強い権力を持っているアクター(行為主体)が存在しないために、世界は常に権力闘争を繰り返すことになります。

リアリズム(現実主義)的な「世界はアナーキー(無政府状態)」で「権力闘争」するという考えが含まれていますよね。

さぁ、ここで一度止まってこれから話すことを、頭の片隅に入れて読み進めると、さらに理解が深まると思います。

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トゥキュディデス、マキャベリ、ホッブスは、リアリズム的な考え方をしていますが、「リアリズム(現実主義)とは何か?」について言及しておらず、リアリズム(現実主義)を体系化・理論化してはいません。

E・H・カーによるリアリズム

E・H・カー(1892~1982年)は、イギリスの国際政治学、歴史家で『危機の20年1919~1939』『歴史とはなにか』の著書として有名です。

E・H・カーは、『危機の20年1919~1939』でリベラリズム(理想主義)による考えだけではなく、リアリズム(現実主義)による考え方も重要であると指摘しました。

ここで重要になってくるのは、「リベラリズム」という言葉と、1920~1930年代の歴史について少し学ぶ必要があります。

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リベラリズムとは

リベラリズム(理想主義)

主権国家以外の国際機構、多国籍企業、NGOなども、国際関係においては重要なアクターであると考え、国際社会の友好や協調を中心に分析する学問的立場の理論

で、リアリズム(現実主義)とは真逆の考え方をします。

第1次世界大戦(1914~1918年)の悲惨な経験をしたことで、世界は国際社会が平和になることを望み国際連盟(1920年~)を設立しました。

人間は学ぶことができ、再び戦争をしないために、友好や協調をすることができる、リベラリズム(理想主義)による考えが主流となりました。

しかし、1930年代後半になるとナチスドイツがベルサイユ条約(第1次世界大戦でドイツが負けて多額の賠償金が課された)に対しての不満が爆発し、パワーを行使して領土や権利を拡大する行動にでました。

国際連盟は機能せずに、結果的に第2次世界大戦に突入してしまいました。

E・H・カーは、このような時代背景から1939年に『危機の20年1919~1939』を執筆し、リベラリズム(理想主義)による考えも重要であるが、リアリズム(現実主義)による考えも重要であると主張しました。

モーゲンソーによるリアリズム

モーゲンソーは、国際社会の本質は「国家間の権力闘争」と定義し、リアリズム(現実主義)を学問的に体系化しました。

モーゲンソー(1904~1980年)は、ドイツの国際政治学者でアメリカに亡命、『国際政治 権力と平和』の著書が有名です。

モーゲンソーはリアリズム(現実主義)とは

  1. 政治とは人間本質にその根源を持つ客観的法則に支配されている
  2. 国際関係は国家のパワーによって定義され利益を追求するために行動する
  3. 国家が生存することが最低条件
  4. 政治行動において道義的な行動が適切であるとは限らない
  5. 特定の国家の道義と普遍的な国家の道義は同じではない
  6. 国際政治において「パワー」こそが他の学問と違いであり、区別することができる

の6つにまとめている。

「ちょっと待って???」要約されすぎて意味が理解できないという人が多いのではないでしょうか。私も最初に学んだときそうでした。もう少しわかりやすく説明します。

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  1. 人間は権力を求めて闘争するから、国際関係においても同じことが言える
  2. 国際関係において国家はパワーを行使して自国の利益を最大化する
  3. 世界はアナーキー(無政府状態)で誰も守ってくれないから、国家が生き残ることが一番重要
  4. 国家が生き残るために、道徳的な行動をすることが、国家の最善の利益になるとは限らない
  5. 国家がこれは「道徳的な考えだ」といって行動するのと、もともと世界にある「道徳的な考え」は別物
  6. 国際政治は「パワー」という概念が重要で、このパワーという概念があるからこそ、他の学問と区別することができる

これでモーゲンソーが学問的に体系化したリアリズム(現実主義)を理解できたのではないでしょうか。

モーゲンソーの『国際政治』はリアリズムを体系化したということだけではなく。国際政治学や国際関係論の展開に大きな影響を与えた偉大な人物です。

 

国際政治学や国際関係論を本格的に学びたい人や理論についてさらに深く学びたい人は、『国際政治 権力と平和』を読んでみてはどうでしょうか

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モーゲンソーによるパワーの定義

最初にパワー=軍事であると覚えましょうといいましたが、このパワーをモーゲンソーはどのように定義したのか見てみましょう。

 

モーゲンソーはパワーを軍事力だけではなく、「地理、天然資源、工業、人口、国民性、外交、政府の質」を包括する概念であるとしてます。

リアリズム(現実主義)の正しい理解

ここまでリアリズム(現実主義)を学んでいると、「人間の本質は権力闘争」だの、「国家はパワーを行使して自国の利益を最大化する」だの、少し物騒な言い回しが多いなと感じた人もいるのではないでしょうか。

「主権国家の(力=パワ)が強ければ自国の利益を最大化することができる」→「(力=パワー)こそが重要だ」→「(力=パワー)こそが正義だ!!」と理解してしまった人もいるのではないでしょうか。

実はこのような理解は大きな間違いで、リアリズム(現実主義)は(力=パワー)をきちん理解し、いやなことから目を背けずに現実を直視し、いかに問題を解決しようとするかが本来の目的です。

勢力均衡(バランスオブパワー)、安全保障など、(力=パワー)を認識したうえで、どのような国際関係であれば危険が回避され、平和が維持できるのか研究がなされています。

リアリズム(現実主義)への批判

リアリズム(現実主義)も完璧な理論ではなく、国際社会の現象をすべて説明できないので、批判も当然あります。

国家以外の非国家主体の重要性

国際機関、多国籍企業、NGOなどの非国家主体の影響力を考慮していないという批判です。

例えば多国籍企業のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の2020年の売り上げは30兆円で、2021年のメキシコの予算とほぼ同じ額です。

これだけの売り上げがある多国籍企業が、世界に影響力を及ぼしていないと言えるでしょうか。

また、国家同士で話し合わなくても、非国家主体のNGOの働きかけがはじまりで、対人地雷禁止条約(オタワ条約)が締結され2020年には164か国が署名をしている事例もあります。

本当に主体が国家だけなのか疑問が残ります。

国家は権力闘争だけを目的としていない

リアリズム(現実主義)では、国家は自国の利益を最大化するために権力闘争をするとされています。

しかし、現代では経済での相互依存・相互協力、文化交流などの国際協調が行われ、常に権力闘争をしている状態であると言えるのか。

パワーをどのように定義するのか

リアリズム(現実主義)では、パワー=軍事力であるというのが伝統できな考え方です。

しかし、軍事力だけではなく経済力や文化力いわゆるソフト・パワーやスマート・パワーも国際関係において、影響しているのではないと指摘されています。

リアリズム(現実主義)はこれらの批判的な指摘を受け、ネオリアリズム(新現実主義)で反論と再定義を行っています。

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※ネオリアリズムについての記事は作成中です。

おすすめの書籍

『国際政治 権力と平和』

リアリズム(現実主義)についてもっと学びたい人は、さきほども紹介しましたがモーゲンソーの『国際政治 権力と平和』をおすすめします。

やはり、リアリズム(現実主義)を体系化して理論化した本なので、リアリズム(現実主義)の必読書と言えます。

『国際関係理論』

国際政治学や国際関係論の理論を学びたい人におすすめしたいのが『国際関係理論』です。

リアリズム(現実主義)以外にも、国際政治学や国際関係論を学ぶ上で、知らなければいけない理論を学ぶことができます。

『国際紛争 理論と歴史』

この本は、国際政治学ジョセフ・ナイ(ジョセフ・S・ナイ)の著書で、ハーバート大学1年生向けの講義の下書きを本にしています。

リアリズム(現実主義)とリベラリズム(理想主義)双方の理論から歴史を学ぶ、国際政治学の入門書となっています。

日本人が書いた国際政治学の入門書とは異なり、理論を重視した入門書となっているで、国際政治学の理論を学びたい人にはおすすめの本です。

リアリズム(現実主義)のまとめ

  • リアリズム(現実主義)とは、世界はアナーキー(無政府状態)という立場で、国際関係の主体は「国家」でパワーを重要視しており、国家間の権力闘争を中心に分析する学問的立場の理論
  • リアリズム(現実主義)は、(力=パワー)を認識したうえで、どのような国際関係であれば危険が回避され、平和が維持できるのか研究がなされています。
  • リアリズム(現実主義)を体系化したのはモーゲンソー

リアリズム(現実主義)について学べたでしょうか?

政治学の宝庫ではん、リアリズム(現実主義)以外にも政治学について解説していますので、興味のある方は、ぜひとも他の記事もご覧ください。

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